「紅型とともに歩む1年 2024年の取り組みを振り返って」
2024.12.31
琉球の伝統を未来へ繋ぐ ~2024年の感謝と挑戦~
私たち城間びんがた工房は、琉球王朝時代から続く王族の染め物「びんがた」を守り続けてきた工房です。沖縄の地で育まれたこの染め物の文化を未来に伝えるべく、日々ものづくりに向き合っています。
2024年も、多くの挑戦と学びに満ちた1年となりました。この場をお借りして、今年の取り組みや挑戦、そして皆さまへの感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

今年の取り組みと挑戦
文化イベント「祝いの布」展示会
私たちの祖父、城間栄喜が住んでいた場所を舞台に、6月と11月に開催した文化イベント「つなぐ想い」「祝いの布」展示会では、多くの方々に工房を訪れていただきました。
通常、私たち城間びんがた工房では、職人たちがものづくりに集中できる環境を大切にするため、日常的な工房見学はお断りしております。

しかし、このイベントでは特別に工房を公開し、紅型の魅力を直接お伝えする機会を設けました。工房見学を通じて紅型の魅力を直接お伝えできたこと、お客様からいただいた温かいお言葉は、職人たちにとって何よりの励みとなりました。
ポケモンとのコラボレーション「島つなぎ」
今年は全国の工芸家の中から選ばれ、株式会社ポケモンとのコラボレーション作品を手掛ける機会をいただきました。紅型とポケモンという異なる文化を融合させる挑戦は困難もありましたが、若い世代を含め、幅広い方々に紅型の魅力を知っていただく貴重な機会となりました。現在もこの作品は麻布台ヒルズギャラリーにて展示中です。

ものづくりの現場での変化
工房内では若い職人が増え、日々の制作現場にも新しい風が吹き込んでいます。新しい挑戦を取り入れながら、琉球文化を守りつつ未来へ繋げるものづくりに励む毎日です。
琉球文化への感謝と未来への決意
琉球の地は中国と日本という大国に挟まれながらも、小さな島国として独自の文化を生み出してきました。戦争の混乱の中で廃墟と化した首里の中でも琉球文化を守り抜いた祖父・城間栄喜、そして9歳から紅型を守り続けた父・城間栄順、さらに歴代の先輩職人たちの尽力があったからこそ、私たちの工房が今も続いています。
その思いを受け継ぎ、私たちはこれからも琉球文化を未来へ繋ぐため、工房全体で努力を重ねてまいります。
2024年の感謝を込めて
2024年も、皆さまの温かい応援とご支援のおかげで、多くの取り組みを実現することができました。新しい挑戦を通じて、工房として、そして職人一人ひとりとしても成長を遂げることができた1年でした。
どうぞ良いお年をお迎えください。2025年も引き続き城間びんがた工房をよろしくお願いいたします。
🌸 城間びんがた工房一同より感謝を込めて 🌸


公式ホームページでは、紅型の歴史や伝統、私自身の制作にかける思いなどを、やや丁寧に、文化的な視点も交えながら発信しています。一方でInstagramでは、職人の日常や工房のちょっとした風景、沖縄の光や緑の中に息づく“暮らしに根ざした紅型”の表情を気軽に紹介しています。たとえば、朝の染料作りの様子や、工房の裏庭で揺れる福木の葉っぱ、時には染めたての布を空にかざした一瞬の写真など、ものづくりの空気感を身近に感じていただける内容を心がけています。
紅型は決して遠い伝統ではなく、今を生きる私たちの日々とともにあるものです。これからも新しい挑戦と日々の積み重ねを大切にしながら、沖縄の染め物文化の魅力を発信し続けていきたいと思います。ぜひInstagramものぞいていただき、工房の日常や沖縄の彩りを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

城間栄市 プロフィール昭和52年(1977年)、沖縄県生まれ。
城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育つ。
学歴・海外研修
- 平成15年(2003年)より2年間、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州に滞在し、バティック(ろうけつ染)を学ぶ。
- 帰国後は城間びんがた工房にて、琉球びんがたの制作・指導に専念。
受賞・展覧会歴
- 平成24年:西部工芸展 福岡市長賞 受賞
- 平成25年:沖展 正会員に推挙
- 平成26年:西部工芸展 奨励賞 受賞
- 平成27年:日本工芸会 新人賞を受賞し、正会員に推挙
- 令和3年:西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞
- 令和4年:MOA美術館 岡田茂吉賞 大賞 受賞
- 令和5年:西部工芸展 西部支部長賞 受賞
主な出展
- 「ポケモン工芸展」に出展
- 文化庁主催「日中韓芸術祭」に出展
- 令和6年:文化庁「技を極める」展に出展
現在の役職・活動
- 城間びんがた工房 十六代 代表
- 日本工芸会 正会員
- 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門 審査員
- 沖縄県立芸術大学 非常勤講師
プロフィール概要
はじめまして。城間びんがた工房16代目の城間栄市です。私は1977年、十五代・城間栄順の長男として沖縄に生まれ、幼いころから紅型の仕事に親しみながら育ちました。工房に入った後は父のもとで修行を重ねつつ、沖縄県芸術祭「沖展」に初入選したことをきっかけに本格的に紅型作家として歩み始めました。
これまでの道のりの中で、沖展賞や日本工芸会の新人賞、西部伝統工芸展での沖縄タイムス社賞・西部支部長賞、そしてMOA美術館の岡田茂吉賞大賞など、さまざまな賞をいただくことができました。また、沖展の正会員や日本工芸会の正会員として活動しながら、審査員として後進の作品にも向き合う立場も経験しています。
私自身の制作で特に印象に残っているのは、「波の歌」という紅型着物の作品です。これは沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、藍型を基調とした布に躍動感をもって表現したものです。伝統の技法を守りつつ、そこに自分なりの視点や工夫を重ねることで、新しい紅型の可能性を切り拓きたいという思いが込められています。こうした活動を通して、紅型が沖縄の誇る伝統工芸であるだけでなく、日本、そして世界に発信できるアートであると感じています。
20代の頃にはアジア各地を巡り、2003年から2年間はインドネシア・ジョグジャカルタでバティック(ろうけつ染)を学びました。現地での生活や工芸の現場を通して、異文化の技術や感性にふれ、自分自身の紅型への向き合い方にも大きな影響を受けました。伝統を守るだけでなく、常に新しい刺激や発見を大切にしています。
最近では、「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」など、世界を巡回する企画展にも参加する機会が増えてきました。紅型の技法でポケモンを表現するというチャレンジは、私自身にとっても大きな刺激となりましたし、沖縄の紅型が海外のお客様にも響く可能性を感じています。
メディアにも多く取り上げていただくようになりました。テレビや新聞、ウェブメディアで工房の日常や制作現場が紹介されるたびに、「300年前と変わらない手仕事」に込めた想いを、多くの方に伝えたいと強く思います。